JOURNAL

竹田でくらす
「竹田で暮らす」をインタビュー
赤嶺貴仁さん

死を決意した男を救った、誰かを支える“あるがまま”の生活とは

2018年7月、直入町に『長湯温泉 湯治宿あんと』をオープンさせた赤嶺貴仁さん。昔からいつも仲間たちの輪の中心にいた彼は、20代で発症したアトピーによるステロイド依存性皮膚症で生活が一転。家に引きこもり、人生に絶望するほど苦しむ日々を送ったと言います。様々な治療を経て、心身ともに回復した彼が見つけたのは、「あるがままの自分で生きられる場所」。新たなステージへと歩み始めた赤嶺さんに、今までのヒストリーと、 “ワクワクする毎日”と話す現在の生活について伺ってきました。

■型にはまらず、好きなことを仕事に

現在は宿の運営の他に、料理人でもあり農家でもある赤嶺さんですが、高校を卒業後は、今とは真逆の人生を歩もうと思っていたそうです。

「漠然と有名人になりたいという夢があって。高校卒業して1年半くらいいろんなオーディションを受けていました。全然先は見えないけど東京で就職する気にはなれないし、何やってるんだろうな・・・ともがいているときに、沖縄で生活している人に出会ったんです。その人と話しているうちに“自分らしくしたいことをしてワクワク生きて良いんだ”って思えて。そこから沖縄に移り住んで仕事を始めました」。

沖縄ではマリンスポーツのインストラクターをしながら生計を立てていた赤嶺さん。喜怒哀楽が豊かな沖縄の人たちとの生活は、彼にとってとても大きな影響を与えたそうですが、給料面で安定した仕事につきたいと帰京。その後好きだった船の仕事に就いて日々楽しく、そしてハードに仕事をこなしていた矢先に、病が彼を襲いました。

■向き合うことで見えてきたもの

アトピー性皮膚炎を患った赤嶺さんは、病院でステロイド治療を受けることに。しかし良くなるどころか、次第に薬が効かなくなるほど症状は悪化していったと言います。

「1年でかなりひどくなっちゃったんですよね。内蔵疾患にはなるし、皮膚もひどくて外を出歩けない。だから仕事もできないし、生活ができない。薬も効かなくなって、命を絶とうかなとまで考えました」。

究極のところまで追い詰められた赤嶺さんは、医者に頼らず自力で完治に向けて動き始めました。本やネットで病気について調べ、さらに同じように悩んでいる人の元へ話しを聞きに行き、脱ステロイドを試みます。

「薬をやめたら翌日から、ダムが決壊するかのように体に溜まっていたものが溢れたんです。体から薬品の匂いがするし、本当に人間と思えないほどで。だから絶対に薬に頼っていた生活はやめようと半年間、誰とも連絡を取らず温泉付きの物件を借りて湯治をしていました」。

それまでは毎晩仲間たちと飲み歩き、派手な生活をしていたという赤嶺さん。半年間初めて1人で過ごした療養期間は、自分とじっくり向き合う時間になったのだとか。

「みんなと同じような食生活してて、なんで俺だけって恨んだ時期もあったんですよ。でも自分と向き合っているうちにやっぱり病気も意味があるんだろうなって。人生で起こることに絶対無駄はないって思えたんです。こんな自分でも役割や使命を持って生まれてきたんだと悟った時に、これからを考えたんです。少しでも自分の生き方を見て良いなって思ってくれる人の力になれたらと」。

今の自分を見つめ直し、受け入れることで得たのは、生きていることへの感謝。一時は絶望の淵に立たされていた彼は、“自分にしかできないこと”で、他にも同じ苦しみを味わっている人を救おうと動き始めました。

■“思い”の連鎖

湯治で療養している際には、食事制限も同時に行い、乳製品やお肉、魚を摂らない生活を続けることに。体もきつい中での食事制限はとても苦痛だったそうですが、そこで新しい道が拓けました。

「食事制限をすると外に食べに行っても食べるものはないし、楽しくないんですよね。だから自分で作っちゃおうと思って。ベジミートを使ってお肉料理に模したり、パンを焼いてハンバーガーを作ったり。そうしたら自分みたいに食べたいけど食べれないと苦しんでいる人たちに向けて、料理の発信をしていきたいと思うようになったんです」。

自分のための料理から、次は誰かのために。一品一品考え抜いて作ることにより、「生産者の思いが込められた食材を使って、一生懸命に料理を届けてみたい」と食材へのこだわりも生まれてきた赤嶺さん。この思いが加速してお米や野菜作りをスタート。さらに宿という場を提供して、同じように苦しんでいる人の支えになりたいという思いへ繋がっていったのです。

「宿をしても、みんなを救えるわけじゃない。うちはただ場所を提供するだけ。でもそこに苦しみを味わった人がいて、まだ完治はしていないけど自然体で毎日ワクワクしながら幸せに生きている人がいたら、それだけで支えになるんじゃないかって思ってるんですよ。微力かもしれないけど、自分にしかできないことをやりたいなって。やっと自分の居場所を見つけられましたね」。

治療するわけでも療養のアドバイスをするのでもなく、ただ美味しいものを食べて、綺麗な景色を見て、一緒に“楽しい”を共有する。あるがままで楽しく生きる姿を見せることが、誰かの希望になると考えている彼。そのワクワクの波及を、これからは“2人”の力で起こしていきたいと話します。

■1たす1が5にも10にも

「家族を持ちたいから、次に付き合う人とは結婚するんだろうなって思ってて。2人なら会話が生まれるし、できることが広がる。1たす1が5にも10にもなる。一緒に農業してとか、宿の女将になってとかは求めないんですけど、お互いしたいことをしながら協力できることは協力し合っていけたら幸せですね」。

宿のオーナーに農家に料理人と、とても充実した日々を過ごす赤嶺さんが、次に訪れるターニングポイントと考えているのが結婚です。家族を持つことで、できることが倍に増える、彼が追い求めるワクワクも2人ならどんどん広がっていく。仕事も生活も恋愛も、全てにおいて彼の根底には“楽しんで生きる”ということが流れているのです。

一度は絶望を味わったからこそ、生きる意味や同じ苦しみを持つ人の支えになりたいという優しさを持った赤嶺さん。ワクワクを原動力に走り続ける真っ直ぐな姿が印象的でした。

◾あとがき

2018年7月1日に竹田市の長湯温泉にオープンした「長湯温泉 湯治宿 あんと」への想いをこちらにも載せさせていただきます。

7年前、長年の“ステロイド依存症“からの脱却。 大変な時期を乗り越える事ができ、いろんな経験や体験、気づきや学びをいただけて。大きく変わる事ができて。
おかげさまで、ようやく心身共に整い、本来の自分を取り戻す事ができました。

“あるがままの自分”
“自分らしく生きる”
“じっくりと自分自身と向き合ってあげる”

「いつかはこんな場所を作りたい」
想い、夢、構想から5年後の、2017年1月。竹田市古園の地でひっそりと宿を開業させていただきました。その後、縁あって長湯温泉の地に移転して、来月より宿を再開業させていただく事になりました。皆様、心からのありがとうございます。

これから、この場所を必要とされる方々に、どうか想いが届きますように^_^
これからも宜しくお願い致します。

赤嶺貴仁
長湯温泉 湯治宿あんと
大分県竹田市直入町大字長湯8024番地
https://910anto.localinfo.jp/